
黒挿入(DyAc/ELMB)とはとは
モーションブラー低減(Motion Blur Reduction)とは、フレームとフレームの切り替わりにバックライトを瞬間的に消灯(ストロービング)することで、液晶パネルの応答速度だけでは解消しきれない残像を知覚レベルで大幅に減らす技術です。人間の目は発光し続ける画素を追跡してしまうため、パネルの色遷移中の中間状態が残像として見えます。バックライトを消すことで遷移中の不完全な画像を見せない仕組みです。
この記事では、BenQ DyAc / DyAc 2、ASUS ELMB / ELMB Sync、ViewSonic PureXPなど各メーカーの実装の違い、輝度低下のトレードオフ、VRR(G-Sync / FreeSync)との同時使用の可否、OLEDパネルとの関係を解説します。
黒挿入(DyAc/ELMB)とはの種類と特徴
BenQ DyAc / DyAc 2

BenQ ZOWIEシリーズ独自のバックライトストロービング技術で、FPS競技プロの間で最も高い支持を集めています。XL2546K搭載のDyAc+から進化したDyAc 2(XL2546X搭載)では、ストロービングの点灯タイミングとデューティ比(1サイクルあたりの点灯時間割合)の制御精度が向上しました。暗いシーンでのちらつき感がDyAc+比で軽減されており、体感輝度の低下も抑えられています。DyAc 2は240Hzでの動作に最適化されており、240fps安定出力できるGPU環境で最大の効果を発揮します。
ASUS ELMB / ELMB Sync
ASUSのモーションブラー低減技術です。ELMB単体はバックライトストロービングのみですが、ELMB SyncはG-Sync Compatible / FreeSyncと同時に有効化できる点が最大の差別化ポイントです。通常、バックライトストロービングとVRR(可変リフレッシュレート)は排他関係にあり、同時に使えません。ELMB Syncはストロービングのタイミングをフレーム描画完了に同期させることで両立を実現しています。ASUS ROG Swift PG27AQNやVG259QMに搭載されています。
ViewSonic PureXP / その他メーカー実装
ViewSonicは「PureXP」(Pure Experience)としてストロービング技術を搭載しています。PureXPはXG2431(24インチ, 240Hz)などに採用され、ストロービングの強度をOSDで複数段階に調整できます。MSIは「Anti Motion Blur」、Acer は「Visual Response Boost(VRB)」と名付けており、基本原理はすべて同じバックライトの高速点滅です。製品間の差は主にストロービング制御の精度と輝度低下の度合いにあります。
輝度低下のトレードオフ
バックライトストロービングの最大のデメリットは輝度低下です。バックライトが1フレーム中の一定時間しか点灯しないため、通常モード比で30〜50%程度輝度が下がります。BenQ XL2546X(DyAc 2)の場合、通常320cd/m2のピーク輝度がDyAc 2有効時には約200cd/m2前後まで落ちます。暗い部屋でのプレイなら問題ありませんが、照明の明るいリビングや窓際では画面が暗く感じることがあります。HDRコンテンツとの相性も悪く、HDRモードとストロービングの同時使用は非推奨です。
実際のゲーム環境での影響
FPS競技ではDyAc 2やELMB Syncの効果が最も顕著に表れます。CS2でフリックエイムした際、DyAc 2をオンにするとキャラクターの輪郭が明らかにシャープになり、移動中の敵の頭部ヒットボックスが視認しやすくなります。BenQ ZOWIEのプロフェッショナル向けマーケティングだけでなく、RTINGS.comのモーションテスト画像でもDyAc 2有効時の残像低減は客観的に確認されています。
レースゲーム(Gran Turismo、Forza Motorsport)や格闘ゲーム(ストリートファイター6、鉄拳8)でも、背景の高速スクロールやキャラクターの素早いモーションで残像低減の恩恵があります。RPGやターン制ストラテジーでは画面の動きが緩やかなため効果を実感しにくく、むしろ輝度低下のデメリットが目立つことがあります。
VRR(G-Sync / FreeSync)との関係は重要な判断ポイントです。BenQ DyAc 2はVRRとの同時使用に対応していないため、フレームレートが不安定な環境ではティアリング(画面の横分割)が発生します。DyAc 2の恩恵を最大化するには、240fpsを安定出力できるGPU(RTX 4070 Super以上が目安)が必要です。一方、ASUS ELMB SyncはVRRと同時使用できるため、フレームレートが変動する環境でもティアリングなしで残像低減を享受できます。
OLEDパネル(LG 27GR95QE、Dell AW2725DF等)はGtG 0.03msと桁違いに速い応答速度を持つため、バックライトストロービングなしでも残像がほぼ視認できません。OLED特有のサンプル&ホールド方式による微小な残像を気にする場合はBFI(Black Frame Insertion)モードを搭載するOLEDモデルもありますが、液晶パネルでのDyAc 2ほどの劇的な効果はありません。残像低減技術は基本的に液晶パネルの弱点を補う技術と位置づけてください。
実際にDyAc 2やELMB Syncの効果を確認するには、testufo.comの「Ghosting」テストページが便利です。ストロービングのオン/オフを切り替えながらUFOの軌跡を比較すると、残像の量が視覚的にわかります。明るさの変化も体感できるため、輝度低下の許容範囲を判断する材料になります。
スペック値の見方と注意点
バックライトストロービングの効果はGtG応答速度のように数値化された統一指標がなく、メーカーのスペック表だけでは比較が困難です。BenQは「DyAc 2搭載」、ASUSは「ELMB Sync対応」のように機能名の有無しか記載しないため、ストロービングの制御精度や輝度低下の程度は仕様書からは読み取れません。
RTINGS.comのモーションブラーテスト(追跡カメラ撮影で残像の太さを測定)が現状最も客観的な比較データです。BenQ XL2546X(DyAc 2)は240Hzでの残像幅が約0.5mmと極めて少なく、ASUS PG27AQN(ELMB Sync)も同等レベルの残像低減を達成しています。DyAc+(XL2546K)はDyAc 2と比較してやや残像が多いですが、他社のストロービング実装よりは優秀です。
ELMB SyncとDyAc 2の選択基準は明確です。フレームレートが常に240fpsを維持できる環境(CS2やVALORANTをRTX 4070以上で動かす場合)ではDyAc 2の残像低減精度が最高峰です。フレームレートが変動するAAAタイトル(Cyberpunk 2077、Elden Ring等)ではELMB SyncのVRR同時使用が実用的に優れます。
DyAc 2(XL2546X)、DyAc+(XL2546K)、ELMB Sync(PG27AQN、VG259QM)の搭載状況は商品DBの仕様欄で一覧確認できます。ストロービング技術の有無はFPS競技向けモニター選びで見落としやすい項目なので、購入前にチェックしてください。
よくある質問
残像低減技術はFPS以外でも有効ですか?
レースゲームや格闘ゲームなど画面の動きが速いジャンルでも効果があります。Gran TurismoやForza Motorsportでは背景のスクロールが滑らかになり、格闘ゲームでは相手の技モーションが見やすくなります。RPGやストラテジーでは動きが緩やかなので恩恵より輝度低下のデメリットが目立つことが多いです。
DyAc 2とELMB Syncのどちらが良いですか?
DyAc 2(BenQ XL2546X)はストロービング精度で最高クラスの評価を受けており、CS2やVALORANTで240fps安定環境を作れるならベストです。ELMB Sync(ASUS PG27AQN等)はG-Sync / FreeSyncと同時使用できるのが唯一無二の強みで、フレームレートが変動するゲームではELMB Syncのほうが実用的です。用途が違うため優劣ではなく相性で選んでください。
残像低減をオンにすると画面が暗くなりませんか?
バックライトが間欠的にしか点灯しないため、通常モード比で30〜50%程度の輝度低下が発生します。BenQ XL2546Xの場合、通常320cd/m2がDyAc 2有効時に約200cd/m2まで下がります。暗い部屋であれば十分な明るさですが、日中の明るい環境ではやや暗く感じます。OSD設定でオン/オフはいつでも切り替えられます。
OLEDモニターに残像低減技術は搭載されていますか?
OLEDはGtG 0.03msの自発光パネルであり、液晶のようにバックライトを点滅させる必要がありません。液晶 + DyAc 2よりもOLED単体のほうが残像が少ないため、OLEDモニターにはバックライトストロービング機能は搭載されていません。一部のOLEDモデルはサンプル&ホールド対策のBFIモードを持ちますが、効果は限定的です。
残像低減とVRR(G-Sync/FreeSync)は同時に使えますか?
ASUS ELMB Syncは両方を同時に有効にできる数少ない実装です。BenQ DyAc 2、ViewSonic PureXP、MSI Anti Motion BlurなどはVRRとの排他制御で、どちらか一方しか使えません。DyAc 2をオンにするとフレームレートの揺れがティアリングとして見えるため、240fps安定環境を前提にしてください。
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残像の原因であるGtG応答速度の仕組みと測定方法はwhat-is-response-timeで解説しています。パネル技術ごとの応答速度特性(TNは全体的に速い、IPSは暗色遷移が苦手など)はmonitor-panel-typesが参考になります。オーバードライブ設定との使い分け(オーバードライブは応答速度自体を改善、ストロービングは知覚的に残像を隠す)についてはwhat-is-overdriveで説明しています。
DyAc 2搭載モデル(XL2546X)とELMB Sync搭載モデル(PG27AQN)の具体的なスペック比較はgaming-monitor-erabikataで確認できます。BenQ ZOWIEシリーズの世代間比較(XL2546K vs XL2546X)は商品DBの比較機能が便利です。
本文中の関連確認: モニターの選び方ガイド